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ウクライナの旅客機がイランの空港を離陸後まもなく墜落し、180人近くが死亡した事故で、欧米の各国はイランが誤ってミサイルで撃墜したという見方を相次いで示しました。これに対しイランは全面的に否定し、両者の主張は真っ向から対立しています。

イランからウクライナに向かっていたウクライナ国際航空の752便は今月8日、首都テヘラン近郊の空港を離陸後まもなく墜落し、180人近い乗客乗員全員が死亡しました。ウクライナ政府によりますと乗客にはイラン国籍の82人とカナダ国籍の63人、またウクライナスウェーデンアフガニスタン、ドイツ、イギリス国籍の人が含まれていたということです。

 

これに対しイラン航空当局の責任者は国営テレビで、「この空域は国際便や国内便が行き交っており、そうした場所でミサイルを発射するなどありえない」としたうえで、「ミサイルで撃墜されたならばらばらになっているはずだが、パイロットは機体から火が出たあと空港に引き返そうとしていた」と主張しました。

さらにウクライナ機が飛行していた高度では防空システムは作動しないとして撃墜説を全面的に否定したうえで、欧米の関係者を調査に招待する考えを示し、両者の主張は真っ向から対立しています。

 

 

過去に旅客機が撃墜された事件では、6年前の2014年、オランダからマレーシアに向かっていたマレーシア航空の旅客機が、戦闘が続いていたウクライナ東部の上空で、ロシア製の地対空ミサイルによって撃墜され、乗客乗員298人全員が死亡しました。

また、1988年にはペルシャ湾の上空を飛んでいた、イラン航空の旅客機がアメリカ海軍の艦船に戦闘機と間違われて撃墜され、乗客乗員290人全員が死亡しています。
 
 1983年には、アメリカ ニューヨークから韓国のソウルに向かっていた大韓航空の旅客機が、予定の飛行ルートを外れて旧ソビエトの領空に入り、サハリン沖で戦闘機に撃墜され、日本人28人を含む乗客乗員269人全員が死亡しています。
 
 

イランの軍がウクライナの旅客機の撃墜を認めたことを受けて、イラン国内では多くのイラン人乗客が犠牲になったにもかかわらず、当初、撃墜が隠ぺいされたとして抗議デモが起きるなど指導部への批判が高まっています。

今月8日、イランの首都テヘラン近郊の空港を出発したウクライナ国際航空の旅客機が離陸の直後に墜落し乗客乗員176人全員が死亡したことについて、イランの軍統合参謀本部は、11日、一転して、誤って撃墜したことを認めました。

革命防衛隊の航空部隊のハジザデ司令官は、イラン全土でアメリカからの攻撃に備えて防空システムの警戒レベルが最大限引き上げられる中、旅客機を敵の巡航ミサイルと誤認し、迎撃するためのミサイルが発射されたと説明しました。

これを受けて、イランでは、旅客機に乗っていた多くの自国民が犠牲になったにもかかわらず、当初、撃墜が隠ぺいされたとして指導部への批判が高まっていて、11日にはテヘランで抗議デモが行われました。

デモには、1000人以上が参加し、集まった人たちは、「独裁者に死を」などと叫び最高指導者のハメネイ師を非難していました。厳格なイスラム体制のイランで、最高指導者を公然と非難するのは異例のことです。

市民からは「政府は、何が起きていたか最初からわかっていたはずだ。最悪のうそをついた」といった声があがっていました。

アメリカとの関係が緊張していることに加えて、旅客機の撃墜に対する国内からの批判の高まりで、イラン指導部は厳しい状況に直面しています。