こころの時代 ニヒリズムを超えて 松塚豊茂

[死んだらおしまいよと、ゴミと同じだと、本当に虚無の中に沈没してしまう。そういうふうに思うのが普通で、現代でもそういう人が多いのではないか。]


いまの人は、死ねば終いだと、何もないと、土に還るだけだと、こう思ってますわ。何もないところから生まれて、何もないところにかえる、と考えると、生きるということが何もないことになる。両方が無に仕切られている間の、50年、100年の命だということになれば、とても生きられる世界ではないと思う。


一般的に生きるということは、何かに支えられるとか、あるいは誰々に必要とされるとか、何かに役立つとか、そういうところから生きることを決めるような、そういう考え方が今は支配的ではないか。それはいわゆる功利主義ですね。これが優勢だと。


ところが、生きるということはそういう外からのいかなる説明でも説明しきれない。生きることの意味は、生そのものにとって自覚できなかったら…そんな外からのあらゆる説明は…。
何かに頼って生きるということは、晩年になったら必ず失望します。もう身体も不自由になるし、みんなからも相手にされなくなるし、孤独になるし。僕は孤独ほど敵わんことない。


[初期の西洋では、仏法は厭世主義であるという認識。世の中を嫌がるんだ、もうダメだと。ニヒリズムというか、虚無の世界に惹かれる人達が仏法に関心を持った。]


厭世主義(ペシミズム)は、虚無主義(ニヒリズム)の前段階で、ずっと突っ込んでいくとニヒリズムになる。ニーチェの言葉を借りれば、「すべては虚しい」。これは全く同感出来る。キルケゴールの言葉を借りれば、「相対的目的に相対的に関係する」というところがニヒリズムにはある。「相対的目的に絶対的に関係する」とは、例えば、自身の生とは関係のないプロ野球チームの勝敗に一喜一憂すること。


「ニヒリストを通り抜けたブッディスト」


ニヒリストを通り抜けることは大変大事なことである。生きる意味はニヒリズムを通さなければ出てこない。ニヒリズムの心は、非常に積極的で創造的なものに導かれている。その非常に積極的なものは、そういう姿で現れてくる、大きな否定として。生きる意味は、我見・身見にまみれた直接肯定からは出てこない。


ニヒリズムは一面の真理を持っている。相対的目的に相対的に関係する。僕もニヒリストです。どうにもならんものはどうにもならん、明日は明日の風が吹く、というところも…、大体、苦しみというものは、どうにもならんことをどうにかしようとするところにある。


ニヒリズムの転換」


大きな否定、絶対否定ということは、自分の力では超えられない。ただ、ニヒリズムは回転軸になる。しかも、180度の回転ではなく、360度の回転です。で、360度の回転は、同じところに戻るでしょう。だから、ちりひとつ動かない。しかし、すっかり変わったといえば、すっかり変わったし、全く変わらんといえば、全く変わらん。


個人的な例は、孤独と寂しさの問題です。若い頃は、孤独と寂しさに耐えられなかった。この頃は、寂しさ虚しさは何も変わらない。特に、晩年になってきたら、先も見えてるし、夕方になってきたら寂しくなる。


しかしね、どこへ逃げたところが同じ事だと。また、寂しさにかえってくる。そういうところは振り切れたと思いますね。変わったと思う。じたばたせん。芭蕉の俳句、憂きわれを寂しがらせよ閑古鳥。さびしさむなしさから、逃げるというところが微塵も無い。もう少し強くいえば、さみしさやむなしさを友とするということ。それは、やっぱり360度の転換でしょう。絶対肯定の世界です。


人間は自己肯定がなければ生きていけない、は真理だと思う。ところが、自己という意味が変わるわけです。心理学者がいう自己は、いわゆる自己で、自己反省は自分の底には届かない。絶対肯定のいう自己とは、如来が自己になること。
自己をはこびて万法を修証するを迷いとす 万法をすすみて自己を修証するは悟りなり


人間というのは表象
ニヒリズムでもいいですけれど、非常に消極的なものです。生きるということを貫く、絶対否定的なものです。絶対的否定は阿弥陀の迫ってくる姿。否定は否定だけが出てこない。才市は阿弥陀になることはできぬ、阿弥陀のほうから才市になる。



最高の生と、最高の死を、一挙に決めてしまう言葉。一挙にというのは、死んでからではなく、生きている時に決めてしまうと。
今まで、生きてつまらん死んでなおつまらんような、どう生きていいか分からない状態だったのに、西本誠哉先生の、生きてよし死んでなおよしと、そういうひっくり返りですね。


http://h-kishi.sakura.ne.jp/kokoro-778.htm


痛みを味わうこと。不条理を愛すること。


井上陽水タモリ宮崎駿、…


https://anond.hatelabo.jp/20141208003341
https://anond.hatelabo.jp/20150511022554


https://anond.hatelabo.jp/keyword/ニヒリズム
https://anond.hatelabo.jp/20171122160027